―――ねぇ、おかあさま。どうしてサフィーは、かみのけも、めも、ほかのひととちがうの?

―――そうね……あなたはお父さまに似たのよ。

―――しっぽも?

―――そうよ。

―――じゃぁ、おとうさまはどうして?

―――……お父さまはね、テラという星の人なの。

―――てら?




―――テラって、何?―――










その恋、砂塵のごとし




<1>


 戦地から一通の手紙が届けられたのは、モンスター討伐隊出征の後、ふた月が過ぎた頃だった。
 手紙を読み進むうち、一瞬青ざめた母の顔を、サファイアは見逃さなかった。
「どうしたの、お母さま」
 母親の目が虚ろに、自分の目線と重なる。
「お母さま?」
 サファイアはガーネットに駆け寄った。
「―――大丈夫よ」
 ガーネットは弱々しく微笑むと、娘を抱き締めた。
「きっと、無事で帰ってくる―――」
 ……お父さまに、何かあったんだわ。
 何があったの?
「お母さま……?」
 母は、何も言わなかった。


 生来、こうと決めたら断固やり通す主義だった。
 じっとしているのが苦手で、よく一人で城を抜け出したりして叱られた。
 だから、今回も。
 決めたからには貫く姿勢で、彼女はアレクサンドリアを飛び出した。
 向かう先はリンドブルム。
 自由に動ける街。
 自分がこの目で戦地の様子を―――つまりは父を―――見ることができる可能性は、アレクサンドリアにはない。
 当てはただ一つ。
 ―――タンタラス。
 父が、十六才まで育てられたという盗賊団だ。





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