<10>



 二人が散々泣いた後、ようやくジタンが起きてきた。
 泣き腫らした目で見上げる母子に、彼は一瞬度肝を抜かれた。
「なんだ、どうした?」
 別に、とガーネットが答えた。
「なんでもないわよ?」
「なんでもないのに泣く奴があるか!」
「なんでもなくても泣く時だってあるわ。ね、ダイ?」
 真っ赤な目で、真っ赤な目を覗き込むガーネット。
「はい、母上」
 思わず、ダイアンは笑った。
「なんだよなんだよ、オレは仲間はずれってワケ?」
「そういうわけじゃないけど、あなたは泣かないじゃない」
「そりゃぁ、指定席取られちゃったからな〜」
 と、ジタンはじと目で息子を見た。
「お前、相変わらず泣き虫だな」
「申し訳ありません、父上」
 おどけた響きを込めて頭を垂れると、ふっと笑った気配がして。
 ジタンは窓からテラスへ出て行った。
「あら」
 と、ガーネット。
「ダイアン、指定席はそろそろ返してあげなきゃダメみたい」
「何故ですか?」
 と問うてから、ダイアンは合点がいって頷いた。
「そうですね」
 もう、充分です。
 彼は、子供の頃と同じ顔で笑うと、立ち上がった。



***



「もう、大丈夫ね」
 ガーネットは肩掛けを直しながら、テラスへ出た。
 ジタンは手摺に凭れて、遠いアレクサンドリア山脈を眺めていた。
「そうだな」
 どこか上の空で、彼は答えた。
「ジタン」
「それってさ、あいつを戦の道に馴染ませちまったってことだろ」
 ガーネットはそっと隣に寄り添った。
「そうかもしれないわ」
 でも、馴染まなければ辛いだけよ。
 ジタンは一瞬非難めいた視線を妻へ送ったが、すぐに彼女を抱き締めた。
 ガーネットがいかに辛い選択をしたか、ジタンには痛いほどわかっていた。









 そして彼は、また戦へ発っていった。

「待たなくていいよ」

 彼はいつもそう言った。

「僕がいない間にいい人が見つかったら、結婚していいからね」

 そして、私はその度に首を横に振った。

「お待ちしています、あなたのお帰りを」




 あなたは、後悔しますか?

 最後の最後で、私を待たせてしまったこと。

 でも、私は後悔しない。

 例え一瞬でも、幸せだったから。










 1843年、冬。
 ダイアン・フェイル・アレクサンドロスは、出征先でその生涯を閉じた。
 そして。
 混乱の中、一人の女性が王国からリンドブルムへと亡命した。
 私生児を身篭っていた、ためだった。
 古いしきたりの続くアレクサンドリアでは、未婚の女性が父のない子を産むなど、とんでもないことだったのだ。





 リンドブルムの商業区で、召喚士の血を継いだ女児が生まれるのは、その直後のことである。






-Fin-






ん〜、あまり納得できない仕上がりだけど、まぁいいでしょう、ということで。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございましたm(_ _*)m
今回は、2世の中でも影の薄い長男、ダイアンのお話を連載させていただきました♪
私の中では、ダイアンはとても存在感のある子なのですが、
如何せん3世のストーリー前に死んでしまうので、今まで自重気味できました(笑)
思いっきり長男を書けて、密かに幸せでございます(笑)

で、ですね!
最後の結びが3世にちょっと繋がってるんですね〜、これが(一人で興奮:笑)
いろいろ悩んだ末、やっぱりこの設定に落ち着いてしまいました・・・( ̄ー ̄)
実はとある人のアドバイスがあったんですが・・・本人は見てないかな?(苦笑)
その時は「それはない!」と言ったんですが、結局、右往左往で落ち着いたのがここ(あはは^^;)
ありがとう、H女史。今度会ったら報告します(私信するな〜!)

やっぱりね、戦争はいけないですよ。
例え相手がモンスターでも、理由もなく殺生するのはよくない。
今、世界が抱えている問題は、戦争で解決するものではないと思います。
それは、異常発生したモンスターを討伐しても、根本の問題を解決しなければ先へは進めない
今回の話と似ていると思いまして。
ダイアンはそのことを分かっていたんだろうなぁと思います。
いや、みんな分かってるけど、どうしようもなかったんだろうな〜。。
世界の平和を守るのは、とても難しいことですね。
2004.3.14




おっと、この小説の題名「fale」の説明を忘れておりました(^^;)
「fale」とは、ダイアンのセカンドネームです。
ラテン語で「幸せ」とかだったら良かったのですが、完全に私の造語です・・・(滝汗)
まぁでも、似たような言葉で幸せを意味しそうな英語もあるので、許してくださいv(コラ!)
最後に残った次女のセカンドネームは・・・もっと造語です(−−;)
2004.3.15






BACK        Novels        TOP