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 テラの青い光は恨めしいほど透き通っていて。
 イーファの樹の不安定な磁場が創り出した次元の穴から、ミコトはこの世界へ落ちてきた。
 その瞬間、希望を見た気がした。
 もしかしたら、彼らは同じような穴を通ってテラへ落ちたのではないかしら。
 そう、思った。
 しかし。
 元ブラン・バルへ辿り着いてみると、土に墓標が立っていて。
 一つの希望は既に断たれていることを悟った。
 知らず涙が零れて。
 ……なぜ、彼のために泣くのだろう?
 ガイアを、テラを、世界を奈落へと陥れた、かの人のために?
「あなたも、私にとっては唯一の存在だったわ、クジャ」
 ミコトはそう呟いた。
「……あなたのしたことは正しいこととは言えなかったわ。……けれど、あなたは私たちにたった一つだけ、希望を与えてくれたの。例え造られた目的が過ちだったとしても、それを克服した生命が生まれたってこと―――私たちはその記憶を絶やしたくないと思った。……そう思うのは不自然なこと?」
 小さく、息を吸い込む。
 何の混じりけもない、ただの空間。
 風の匂いも、太陽の匂いもしない。
 ―――お別れだわ。
「私たちは信じたいの。私たちがこの世に生を受けたことは、決して間違いじゃなかった……って」

 あなたは強かった。
 あなたは脆かった。
 あなたは生きていた。

 確かに生きていた―――。

 私たちは忘れないわ。
 あなたが紡いだ希望と絶望。
 あなたが築いた運命と偶然。
 あなたの記憶は、私が確かに受け継いだ。
 だから、安心して。


 ミコトは足を踏み出した。
 二度と振り向くまい。
 そう、ここに彼の墓があるということは。
 ―――もう一つの希望が、どこかで生きているということだから。



***



 元パンデモニウムの辺りまで来た時。
 モンスターではない気配を感じた。
 瓦礫の積み上がった向こう、金色の頭がきょろきょろと動いている。
 ―――ジタン。
 やっぱり……。
 やがて、青い目は強い光を称えたまま彼女を見つめた。
 ミコト? と呼ばれ。
 唐突に涙が溢れ出す。
「お、おい」
 慌てて駆け寄ってきた彼に、
「……ジタン、生き……てた……の?」
 と、問い掛けた。
「あ、ああ。たぶん生きてるんだと思うけど」
「ごめん……ごめんなさい!」
 ミコトはその場に蹲って泣き始めた。
 もっと早く来れば―――彼をこんなにも長い間閉じ込めなくて済んだだろうに。
 なんて、取り返しのつかないことをしたのだろう……!
 私が来れば、クリスタル・ワールドに次元の穴があるかもしれないことぐらい、容易に想像が付いたのだから。
 でも。
 彼は笑って言った。
 ミコトが来てくれてありがたい、と。
「オレ一人じゃ永遠に抜け出せなかったかもな」
 と、頭を掻いて、いつものように。


 ―――ビビのことを話すと。
 ジタンは一度目を閉じ、しばらくそのままじっと動かなかった。
 やがて、深い溜め息と共に目を開けた。
 彼は何も言わなかった。
 代わりに、ミコトは自分が感じたことを素直に打ち明けた。
 ビビにとって、ジタンが大切な人だったとわかったこと。
 大切な人を失うことが悲しいということ。
 そう思ったら、どうしてもイーファの樹へ行かなければと思ったこと。
 ミコトは一生懸命話した。
 沈黙は怖かった、から。






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