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荒れ狂う波。凍るように冷たい波しぶきを頭から浴び、体は手指の先から冷えていった。
舟が大波に傾ぐ。自分を抱き締める母の腕に力がこもり、彼女は小さく悲鳴を上げた。
『―――!』
母が、自分を呼んでいる。
なんて呼んだの、お母さん?
『―――!』
聞こえない。
耳が聞こえない。
目も見えない。
足も手も、冷え切って感覚がない。
お母さん!
怖い。
怖いよ。
叫びたくても、声がでない。
ここはどこ?
あたしたちはどこへ行くの?
お父さんは?
村は?
お母さん―――!
―――カタン。
そよ風に窓ガラスが小さく音を立てた。
ガーネットははっと目を覚ます。
薄く暮れかかった空。カーテンの隙間から、部屋に橙色の光が射し込んでいた。
ガーネットは目元をこすると、座っていた椅子から立ち上がり、僅かに開いていた窓を完全に開け放った。
群青色の空を、夕日色の雲に向かって白い小鳥たちが飛んでゆく。
あの山の向こう―――リンドブルムからやってくる、劇場艇。
自分の運命の全てを握っている。
ガーネットは、きゅっと唇を噛み締めた。
騒ぎになるのだろう。
母を混乱させるだろう。
誰かが傷ついたりしないだろうか。
本当は、怖い。
たった一人で城を抜け出すなんて、今まで一度もしたことがない。
一体、自分には何が出来るのかもわからない。
怖くてたまらない。
―――けれど。
負けるわけには、いかないの。
心が、そうと叫ぶから―――
誰かが、暗闇の向こうで彼女を呼んでいた。
光の差す方角を、声は彼女に示し続けていた。
その光に、必死に手を伸ばして……
……しまったから。
―――彼女は行き着くことになる。
彼女の本当の故郷。
彼女の本当の名前。
彼女の本当の定め……。
ガイアの命の全てが、ガイアの記憶の全てが、彼女を求めて叫び狂っていた。
旅が、始まる。
そう。
―――見つからないものを、見つけるために。
-Fin-
さぁ、何を書きたいのかサパーリですな(^^;)
FF9の旅って、結局はガネ姫がリンドブルムへ行くことを決意したから
始まったものだったと私は思ってます。
ガネ姫がただ誘拐されてシド大公に無事かくまわれているような女の子だったら、
この話はなかったんじゃないかと。
・・・いや、そうでもないなw(何)
全ては運命だったのかもしれませんねぇ・・・うん。なんかそんな気がしてきた(爆)
とりあえず、FF9のメインテーマ(?)「見つからないものを、見つけるために」を
使った小説を書いてみたいと常々思っていたので、今回使ってみました(笑)
・・・でも、見つからないものって、見つからないんじゃ?(爆)
2003.2.9
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