<2>
飛空艇で三時間。最果ての大地が見えてくる。
凍った大陸だ。
飛空艇の中でクイナ特製のサンドイッチ弁当を平らげた一行は、元気にグルグ温泉街へと降り立った。
「ようこそ、グルグ温泉へ」のイロモノ(何)アーチをくぐり、目指すは中腹の宿。
辿り着いてみると、玄関前にはこんな立て看板が。
『本日の団体様:勇者様ご一行様』
「―――はい?」
ジタンが度肝を抜かれると。
「だって、他に思いつかなかったんだもの……」
と、ガーネットは顔を伏せた。
部屋割りは、男部屋と女部屋の二部屋。
隣り合わせという、絶好のロケーショ……ごほごほっ(笑)
女性陣、荷物を置いてまったりとお茶でも飲みつつくつろいでいるところに。
男性陣がやってまいりました。
「なぁなぁ、混浴の露天風呂ってないのかぁ?」
「な、ないわよ(^^;)」
「そういうところをわざわざ選んだのじゃ」
「どこかの誰かさんがスケベなこと考えるからね〜」
「ひっで〜」
ジタン、じと目になる。
「おぬしの行動は全て予測済みじゃ。観念してよい子にしておるのじゃな」
フライヤ姐さん、保護者のお言葉。
部屋の隅で柱にもたれて座っていたサラマンダーが鼻で笑った。
「サラマンダー! お前、今笑っただろ!」
「……」
「無視するなぁぁぁ!!」
「うるさいウルサイう〜るさいのだわ!」
エーコがばんっと座卓を両手で叩いて立ち上がった。
「ダガー、フライヤ、ご飯の前にお風呂入りましょ♪」
「いいわね、そうしましょうv」
「そうじゃな。ほれ、おぬしらは部屋へ帰れ」
サラマンダー込みで追い出された男性陣(笑)
約一名、何やらよからぬことを考えているようです。
「ビビ、オレたちも風呂行こうぜ!」
「え? あ、うん、いいよ。じゃぁ、スタイナーのおじちゃんとかも呼んでくるね!」
―――待て、余計なことをするなぁ〜!
と、心の中で叫ぶジタンであった。
***
「すご〜い! おっきなお風呂なのだわ!」
エーコがぴょんぴょん飛び跳ねる。
「ちょっとエーコ、危ないわ。足を滑らせて転ぶわよ?」
「えへへ、ダガーたちとお風呂に入るなんて、すっごく嬉しいのだわv」
「わたしもv」
「どれ、エーコ。頭を洗ってやろうかの」
「わ〜いv」
エーコは石鹸でシャボン玉を作りながら、フライヤに頭を洗ってもらう。
男湯の方はなんだか騒がしいが、音がこもって詳しい会話の内容までは聞き取れなかった。
「何暴れてるのかしら」
と、ガーネット。
「きっと、またジタンが悪戯でもしてるのよ」
エーコが言い、一際大きく膨らんだシャボン玉をふぅっと吹いた。
「まぁ、上手ね、エーコ」
「ダガーもやろうよ!」
「これ、動くでない。シャンプーが目に沁みてしまうぞ」
「いや〜っ(><)」
エーコはぎゅっと目を瞑り、動くのをやめた。
「しかし、ダガーはこういう宿は泊まり慣れぬであろう」
「ええ。でも、楽しいわ」
「ならよいがのう。エーコ、湯を流すぞ」
「うん!」
ざ〜っと、エーコの頭から泡が流れ落ちた。
さてさて、夢のような女湯に引き換え、男湯の方はと言うと。
「見えるか?」
「え? え〜っと……ジタン。やっぱりこういうのはよくないと……」
「これが楽しくて来てるんだぜ? よし、足場が必要だな!」
「―――何をするかと思えば、お前は」
「サラマンダーもするか、覗きv」
「……犯罪だぞ」
「今更だろ、お尋ね者!」
「―――誰のせいだ」
ところで。
こんな時絶対に喚き始めるはずの我らが隊長は。
ジタンに散々呑まされ、赤い顔でほとんどのぼせちゃってます・・・(汗)
―――これは、計画的犯行と見て間違いないでしょう、警部(何)
「よし、これで隙間から覗けるな」
「ジタン〜、見つかったら怒られるよ?」
「大丈夫だって。まさか天井と壁の間に隙間が開いてるなんて、きっとあっちは気付いてないって」
「そ、そうかなぁ……」
「おい、それより。ビビは来ないのか?」
「ボ、ボクは落ちそうだし、いいよ……」
それもそのはず。ジタンがよじ登っているのは、桶やらを積み上げ重ねあげた足場。
はっきり言って、心許ない。
「何だよ、思い切りのない奴だなぁ、せっかくのチャンスなのに」
はりきりジタンは背伸びして、天井と壁の間の隙間(約20センチ)から顔を出す、と。
「曲者!」
洗い場で頭を洗っていたフライヤが、すかさず手元の汲み桶を時速160キロで投げた(なんと、あのM坂よりも速い! しかも、サウスポ〜v:笑)。
抜群のコントロールで、ホシの額にジャストミ〜ットっ!
パコ――――ン、といい音がした。
「「きゃ〜v」」
お二人、悲鳴に「はあと」が入ってますが。
「フライヤカッコい〜v」
「今度、サラマンダーみたいに『投げる』使ってみたら?」
「そうじゃなぁ、やってみようかのう」
そんな女性陣の楽しげな会話の向こうで。
哀れジタン、やはり足場が崩れた模様。派手な音を立てて頭から転倒。
「ジ、ジタン、大丈夫〜?」
ビビが一人慌てた声で叫んでいましたとさ。
大丈夫、石頭は打たれ強いからね(笑)
|