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由緒正しい旅館の料理は、まず『向付け』から。
ということで、宮廷料理並みに面倒な手順で料理は運ばれてまいります。
……食べた気がしないなどと言うのは、どこの誰ですか!?
「ビビ、あとでラーメン食いに行こうぜ」
「え、ボクお腹いっぱいだけど……」
「いいからいいから」
「ちょっとジタン! そんなに食べたらビビがお腹壊しちゃうでしょ!」
と、エーコ嬢からきついお叱りの言葉が。
「あら、ビビったらご飯粒ついてるわよ」
隣に座っていたガーネットが、ハンカチを取り出してビビの顔を拭き出した。
「あ、ありがとう、おねえちゃん」
「どういたしまして(^^)」
はい、誰ですか、自ら顔にご飯粒貼っつけてるのは。
ガーネットは裏工作の存在にさえも気づかず、「この白和え、美味しいわね」とクイナに話しかけていた。
ジタン氏、エーコ嬢に白い目で見られています。
「ゴホンッ、それでだ」
と、仕方ないので自分で顔を拭きながらジタン。
「飯が終わったら、早速花火に行こうぜ!」
「やった〜♪」
エーコは箸を持ったまま両手を上げて喜んだ。
「これ、エーコ。行儀の悪い真似をしておると、ジタンのようになるぞ」
フライヤが注意し、エーコは途端にぴたっと両手を閉じた。
「……あのなぁ」
ジタン脱力。
「スタイナー、ご飯のお替わりは?」
と、ガーネットがお盆を片手に立ち上がった。
「いやいやいや! 自分でするであります!」
「いいわよ、遠慮しないで。お茶碗をお盆に乗せてね。サラマンダーは?」
無言でお盆に茶碗を乗せておられます、はい。
「ジタンもお替り?」
「……うん(じ〜ん)」
密かに幸せをかみ締める少年がいましたとさ(笑)
***
なんだかんだでご飯も終わり、暗くなった宿の庭で花火をすることになった。
「ボク、線香花火がやりたいな」
と、ビビ。
「ダメダメ〜、そういうのは最後にとって置くんだぜ? 最初はもっと派手な……」
と言うと、ジタンは打ち上げ花火を手に取った。
「こういうのをだな、サラマンダー!」
「……なんだ」
「行っくぜ〜!!」
「……待て」
花火を人に向けてはいけません、って書いてあるのが見えないんですか〜?
二人は打ち上げ花火を振り回して、追いかけっこを始めた。
いい子の皆さんは、危険ですから絶対に真似しないでくださいね!
「は〜い」
「ホントに危ないのだわ、あの人たち(怒)」
「ほらエーコ、綺麗ね」
と、ガーネットは手にした花火をエーコに示す。
色とりどりの光が、花火の先から零れ落ちていく。
「キレイ〜v」
早速エーコも、花火に火をつけた。
「エーコ、ビビも、火傷せぬように気をつけるのじゃぞ」
「「は〜い」」
シューシューと、幾つもの花火が光を噴く。
全員、光の反射でキラキラと目が輝いて見える程。
ジタンは打ち終わった花火を片付けながら、愛しい少女の横顔をじっと見つめていた。
「おい、まだ火が燻ってるぞ」
ボーっとしているジタンの手から煙の出ている花火の残骸を取り上げ、水をかけるサラマン氏。
「……チッ。ぼさっとしやがって」
とか言いながら、結構世話を焼いてあげるイイ奴なのだった。
ところで、こんな時真っ先に「姫さま、危ないのであります!」とか言いそうな隊長殿はどうしたのかと言うと。
「不思議なにおいアル。これ食べられるアルか?」というクイナに捕まり、花火の造りの根本から説明させれられていたのでした(笑)
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