<2>
昼間街に出ていたジタンが城へ帰ってみると。
ガーネットは窓際に座って頬杖をつき、夕日に染まる窓辺の景色を見つめていた。
その情景がなぜか切ないように感じて、それがもしかしたら自分のせいなのではないかと思って。
ジタンはそっと歩み寄ると、細い両肩に手を置いた。
愛しい姫君はふわりと振り向く。
「あら、お帰りなさい」
「ただいま」
ガーネットはクスクスと笑みを零した。
「こういうのっていいわね。お帰りなさい、って言える相手がいるのって」
「そうか？」
「ええ」
……夕日の悪戯だ。
ガーネットはいつも通り、にこにこ微笑んでる。
でも、何を見ていたんだろう？
「ねぇ、ジタン」
「ん？」
「わたしのこと、好き？」
「へ？」
柔らかく微笑んだ顔は、しかし真剣に見える。
ジタンはたじろいだ。
「な、何だよ急に……」
「ねぇ。本当に、わたしのこと好き？」
「当たり前だろ」
「じゃぁ、そう言って」
―――誰の入れ知恵だっ！
「わざわざ言わなくてもわかるだろ？」
「でも……言って欲しいの」
黒い瞳がじっと、ジタンを見つめる。
たじっ。
この目には、断然弱い。
「あ〜、ほらさ。大事なキモチってのはひっそり心にしまっておくからいいんであって……」
「だって、ジタンは道を行く女の子にも愛を語るんでしょう？」
―――誰の入れ知恵だっっ！！
「いや、それはだから……」
「そういう子には好きって言えても、わたしには言えないのね」
「だぁぁ―――！ だからそうじゃなくて！」
ぐっと手を引っ張り、立ち上がらせる。
「そんな簡単に言うかよ、そんな―――」
―――ドキン。
胸が騒ぐ。
「その―――好き、なんてさ」
「ちゃんと顔見て言ってよ」
ちらっ、とガーネットを見て、再び顔を背けるジタン。
ガーネットは思わず赤くなり、口に手をやった。
「そ、そんな顔しないでよ……恥ずかしいじゃない」
「こっちのが恥ずかしいよ！」
明後日の方向を向いたまま、ジタンが言う。
―――その顔は、夕日のせいで真っ赤に染まったことにしておいてあげよう。
ガーネットは、クスリと笑った。
「やっぱり、言葉で言われなくてもわかるからいいわ」
「なんだよ、もぉ〜」
膨らんだ頬を両手で挟むと、ガーネットはにっこり微笑んだ。
「あなたって、意外と照れ屋なのね」
「……悪かったな」
「あら、悪くなんてないわよ？」
ガーネットは小さく首を傾げた。
「わたしの知らないあなたがたくさんいた方が、これから少しずつわかっていかれるでしょう？ その方が嬉しいもの」
と綺麗に微笑む少女に、思わず目を奪われてしまう。
| 『いつもあなたの声を聞いていたい、いつもあなたの瞳を見つめていたい、いつもあなたの肌に触れていたい……』 |
という、さっきのセリフが頭を過ぎった。
―――なんか、わかるかも知れない。
思わず、腕を引いて抱き寄せると。
腕の中でびくりと驚くのさえ愛しいような。
……だから。
ずっと傍にいて欲しい。ずっと傍にいたい。
ずっとこうして―――
「おのれ、ジタン！ 何をしているか！」
「げげっ！」
いつの間にやら恐れ多くも勝手に扉を開け放ち、鬼の形相で割り込んできたブリキ殿。
結局、ジタンは城を一周分逃げ回ったらしい。
「……スタイナー。いつか馬に蹴られるわよ」
と、取り残されたガーネットがひとりごちたという。
-Fin-
ああぁぁぁ（涙） ごめんなさい、ちっともリクエスト通りでないものになってしまいました〜（T_T）
リクエストの内容は、
「ジタンがガーネットに初めてきちんと気持ちを伝えた時のお話」でした。
楽しいリクエストで嬉しかったのですが、いざ書こうとしたらむ、難かし〜〜〜ぃ！（＞＜）
逃げ回っているのは実はせいですね〜（苦笑）
こ、こんな感じで許してもらえます？ みなこさん？（涙） ホントすみません（；；）
しかも、なんかありがちっすねぇ、話の流れが（＾＾；）
ブリキがいっぱい出てくるし･･･（笑）
苦労の後が見え見えですが、心を込めて書きました。それだけは本当です（＞＜）
ちなみに、エイヴォン卿のお話は創作です（笑）
う〜む、ジタンもあれくらいバシッと言っちゃえばいいのにねぇ（何）
結局気持ちをちゃんと伝えたかと問われれば言ってませんと言うしかなく（；；）
がぁぁぁぁぁん（悲）
ともあれ、リクエストありがとうございました〜！
超駄作ですが、どうか勘弁してやってください（T_T）
2002.11.6
|
|
BACK