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「傷は痛まないか?」
「はい」
「―――いきなりかしこまるなよ」
「あなたはブルメシア王国の王子であられるとおっしゃった。竜騎士は王国に仕える者なのでは?」
「そういうことには詳しいんだな」
 霧が大地を駆け抜けていく。
 恐ろしく暗い空。
 川を越え、洞窟を越え、砂丘の向こうがクレイラだ。
「私は竜騎士だった―――あなたのおかげで、そのことだけ思い出せました」
「そんなことより、もっと思い出してもらいたい人間がいるんだがな」
 パックは溜め息をついた。

 ―――フライヤ。

 リンドブルムの狩猟祭が終わったあと出発したとして、今日明日にはブルメシアに辿り着くだろう。クレイラで鉢合わせるのは必須だ。
「今は、国を守ることが先決です」
「……わかってるよ」
 記憶を失ったところで、フラットレイはフラットレイ。言動一つ一つが彼たることを証明する。
 特に、ひとたび戦闘になれば鉄の尾の名を保持するに足りる実力であることは、誰の目にも明らかだ。
 フラットレイに怪我を負わせられるモンスターなんて、一体どんな奴だったのかと思えば。
 空を飛ぶ大きな鳥型モンスターだった、とのこと。脚力の強いブルメシア人が得意とするジャンプ攻撃が効かなかったのだ。
 数瞬手間取った隙に鋭い嘴で一度攻撃を受けた、と。
「どんな相手でもよかったのです。他に何もすることがなかったので」
 フラットレイはそう言って微笑んだ。


「ところで、王子殿の御名は何とおっしゃるのですか」
 フラットレイは、ふとそう尋ねた。
「あれ、まだ言ってなかったか?」
「はい、伺っておりません」
「おれの名は、パックだ」
「なぜ、お一人で旅を?」
「広い世界を見て回るためだよ。ブルメシアは閉鎖的な国だし、保守的で新しい技術を受け入れない体質なんだ。そういうところを変えていかないと、世界から取り残されるだろう?」
「そうですな」
「お前だって広い世界で腕を試すんだって飛び出していったんだぞ。おれと同じさ」
「そうでしたか」
「でも、結局おれもお前も間に合わなかったな。みんな、無事ならいいけど……そうもいかないよな」
 パックは俯いて黙り込んだ。
 フラットレイは、そんな彼をじっと見つめる。
「そのお年で、深いお考えをお持ちなのですね、パック王子」
「子供じゃないんだ、当たり前だろう。それから、パックでいい。王子呼ばわりされるのはあまり好きではない」
「―――かしこまりました、パック殿」
 結局かしこまるのか、と、パックは幾分うんざりとして溜め息をついた。
 記憶を失くしても、体に染み付いた慣習は抜けないものだな、と。
「これから、クレイラに向かう」
 パックはキッパリ告げた。
「クレイラ……」
「ブルメシアと同じ民族が暮らす国だ。ブルメシアが陥落したら、次はクレイラだと思う」
「そうですか……」
「一緒に来てくれるか、フラットレイ」
 パックは帽子の影から覗かせた瞳で、フラットレイの顔を見上げた。
 目線の先の竜騎士は、一つ強く肯いた。





-Fin-



ということで、はい、フラットレイのキャラがいまだに掴めません(苦笑)
リクエストは「パックとフラットレイの旅、フライヤとクレイラで再会するまで」でしたv
こんなんでよろしかったのでしょうか、奈美さん・・・なんだか愚作すぎて申し訳ない気が(滝涙)
リクエストは「旅」だったのに、どうにも旅する前段階で終わってるし(−−;)
でも、二人はこのまま直にクレイラへ行くと思うので、フライヤとの再会も間もなくです。
ちなみに、またまたファンタジーなところが(何)
ジャンプ攻撃って飛空モンスにも効きますよね(^^;) あはははは・・・(大苦笑)

いやぁ、ブルメシアンもいいですねぇv(笑)
いつもアレクサンドリア&リンドブルムばっかり往復なんで(爆笑)
パックはあの歳でなかなか大人っぽいと思っているのは私だけ・・・?(汗)
でもって、フラットレイはまだまだ研究中でございます(^^;)
彼ってゲーム中ほとんど出てきてくれなかったキャラですよねぇ・・・結構重要なのに。
ちなみに、記憶喪失については知識0ですので、アシカラズ(苦笑)
ああ、フラットレイをカッコよく書きたいよぉ(涙)←ヘタレ病。
何はともあれ、キリ番リクエストありがとうございましたm(_ _)m
2002.12.14



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