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 結局、子供が死んだという通りの奥まで進む気にもなれず、かと言ってこのままこの老人の話を聞いている気にもなれず。
 ジタンは黙り込んでしまった老人に「オレ、そろそろ帰るから」と声を掛けると、駅に向かって走り出した。
 途中、例の物欲しそうにしていた犬に出くわしたので、ジタンは鞄から弁当箱を出して、中身を犬にやった。
「ちょいとあんた、その犬に餌付けなんぞしないでおくれよ」
 と、不意に頭上から声がして。
 ジタンが顔を上げると、大柄なおばさんが腰に手を当てて彼を睨めつけていた。
「ここに住み着かれたら迷惑なんだよ。ほら、さっさとどかしとくれ」
 彼女は手に持っていたゴミ袋を大きな箱に投げ入れた。
「……あの、おばさん」
 ジタンは気後れしつつも尋ねてみた。
「この通りの奥で、食べ物を盗んだ子供が殺された話って、本当?」
 彼女は目を丸くして彼を見た。
「何だって?」
 それから、得心したように肯く。
「ああ、あんたあの老いぼれから聞いたんだろ。そうさ、その話は本当のことだよ。ただし、もう五十年も前のことだけどねぇ」
「……五十年?」
「そうさ、まだ世界が戦争にまみれていたころの話だよ。あんた、あんな老いぼれの話なんて、真に受けるんじゃぁないよ。ほら、帰った帰った」
 恰幅のよい体を揺すりながら、彼女は扉を開けて、彼女の家……というより何かの店のような建物に入っていってしまった。
 石畳の上に、立ち尽くしたままの少年を残して―――。



   *



「ま、結局さ。オレが生まれた頃には、リンドブルムには既にスラムなんかなかったんだよな」
 と、ジタンは笑った。
 子供たちと一緒につい話に引き込まれていたガーネットは、ふとその笑みに胡散臭さを感じた……のだが。
「そんなわけで、お前たちもオレたちも、みんな戦争のない時代に生まれて来れて幸せだと、父さんは思うわけだ。だから、好き嫌いなんて言わないで何でも感謝して食え、と」
 ジタンがそう言うと、真っ先にエメラルドが肯いた。
「はい、お父さま。わたし、我が侭でした」
「僕も、ホウレン草食べられるように頑張る」
 と、ダイアンも決意表明した……が。
「サフィーはイヤ!」
 と、末娘。
 思わずガタンとずっこける父親。
「お前なぁ、父さんの有難い話、ちゃんと聞いてたのか?」
「きいてたよ! おとうさまもニンジンたべれなかったんでしょ? だから、サフィーもたべない!」
「あのなぁ……」
 その時、間がいいのか悪いのか、クイナが食堂へ入ってきた。
「みんな食事は終わったアルか〜? デザートの時間アルよ!」
「わ〜い♪」
 サファイアはニンジンの入った皿を押しやると、元気にクイナの元へ走り去っていった。
 それを見た彼女の姉と兄は、お互いにまじまじと顔を見合わせると、やはり立ち上がって大好きな甘いお菓子に走っていってしまった……。



 テーブルの下で、ガーネットが夫の足を蹴飛ばしたのは言うまでもない。





-Fin-



うむむ、何気なく問題発言の多い小説・・・ほんの少し、平和を願うメッセージを込めました。
こんな時代だからこそ、戦争反対の気持ちを込めた作品を書いてみたいと思っていたので、
今回、少しだけそんな雰囲気を入れてみましたのです・・・(汗)
リクエストは「親父ジタンが子ども時代を思い出す」ということで、
タンタラスと二世にリクエストいただきました〜♪
ちなみに、三人の子供たちが嫌いな食べ物は、私と私の友人たちがリアルで嫌いな食べ物です(笑)
好き嫌いがめちゃくちゃ子供風味ですねぇ・・・私の嫌いなものはまだまだありますが(爆)
とりあえずジタンパパが昔を語っている風に仕上げてみたけれど・・・ダメダメですね(涙)
せっかくリクエストくださった真緒さん、ごめんなさいましm(_ _)m
あんまりタンタラス出てきてないし(;;)
・・・この辺で勘弁してやってくださいませm(_ _;;)m
そう言えば、ジタンが語った話はどこからどこまでが本当なんでしょうね・・・( ̄ー ̄)ニヤリ(ぉぃ)

ところで、アレクサンドリアご一家の食卓の座り順、分かっていただけましたかね?(何)
よく読むと大体分かってしまうと思うんですが・・・あ、ちなみにお母さんが上座です、この家(笑)
そして、諸事情よりお父さんは下座です(爆笑)
ガネ姫がジタンの足を蹴れるとは、ずいぶん小さなテーブルで食べてるんだな〜〜・・・って、
言わなければ誰も気づかないかもしれない事を暴露ってみたりして(てへっ)←アホ
ガネ姫は自分が両親と食事する時広〜い食堂で寂しかったので、
自分が親になったら小さな食卓を囲みたいと思っていたみたいです。
ほかほかの家族愛・・・ラヴv(何)

とにもかくにも、リクエストありがとうございました〜♪

2003.4.6



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