<6>
次に目を覚ました時には―――たぶん夜明け前に近かった―――、体中にびっしり冷や汗をかいていた。
何かひどい夢を見たような感覚はなく、ただ口の中がカサカサして不快だった。
ラニは起き上がった。
同時に、気配を察したサラマンダーが目を開ける。
「どうした」
眠っていたのだろう、少し掠れた声色。
「水を飲んでくるわ」
「持ってきてやろうか」
サラマンダーも同じように起き上がり、心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
青い瞳が月明かりに光る。
どうして、この人の目はこんなに切ないのだろう。
不意に、ラニは泣き出したい気持ちでいっぱいになった。
どうして、この人の側にいたいと願う度に胸が痛むのだろう。
様子を伺っていたサラマンダーは、無言でベッドを抜け出した。
「待って!」
思わず、手を伸ばして引き止めるラニ。
「行かないで」
ぽろっと、黒い瞳から涙が零れ落ちた。
「一人にしないで、お願い」
サラマンダーは振り向いたまま、じっと彼女を見ていた。
彼がどんな顔をしているのか、ラニにはわからなかった。ただ、ゆっくりとベッドに戻り、腰を下ろしたのはわかった。
抱き寄せられ、広い胸に凭れてすすり泣いた。
ずっと頭を撫でてくれる大きな手が、優しくて暖かくて、切なかった。
「お前が欲しいのは、家族だろう」
サラマンダーはふう、と煙を吐くと、呟いた。
優しいまどろみから醒め、ラニは「え?」と訊く。
「本当に欲しい物」
「ああ、あれ」
彼女は恥ずかしそうに枕に顔を埋める。
褐色の背中に、月が反射して綺麗だ。
「おかしかったのよ、私」
「やっと本音が出たんだろうが」
ラニは目を見開いた。
「ダンナ?」
「何だ」
「……変わったかも、やっぱり」
ふん、と笑うと黒褐色の髪にキスを一つ落とす。
「そういうのが嫌なら、帰ればいい」
「また、意地悪言う」
クスクスと、彼女は笑った。
「欲しいなら、俺がやる」
サラマンダーの言葉に、ラニはもう一度「え?」と訊く。
「お前が欲しいなら、俺がやる」
「……何を?」
彼はもう何も言わなかった。
何も言わず、煙草をふかし続けた。
夜の四十万がどこまでも染み渡るように優しくて。
立ち昇っていく紫煙を目で追いながら、ラニは囁いた。
「好きよ」
-Fin-
・・・すんまへん、あんまり気に入らない仕上がりです(^^;)
これ、最初はサラ→フラな話にしようと思って書いてたんですが、
いつの間にかサラニが書きたい話になってしまったので、
最終的にはフライヤのシーンをかなり削りました(笑)
なわけで、結構ツギハギになってしまって、最後までまとまりませんでした〜(^^;)
やっぱりサラマンにはラニ姐さんかなぁ・・・と思ってるんですが、皆さんはいかがなのでしょうか?
この後二人は何となく同棲→内縁?な感じで、子供(たぶん娘?)も産まれて、
それなりに幸せなカップルになるかとv
アレクサンドリアが鎖国する頃(3世前くらい?)には、娘夫婦+孫はリンドブルムに移住しますが、
サラマン氏はアレクサンドリアに骨を埋める予定です。細かっ!(笑)
ちなみに、このお話はホントはかなりアレなイメージでした・・・が。
良心から割愛させていただきました(苦笑)
サラニとか、サラフラとか、な〜んかオトナな雰囲気ですよねぇ、やっぱり(ニヤ←コラ)
2005.8.27
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