雨の国から
空へ還る
君に




 フライヤが奏上した言葉を、なんて言ったと問うてもう一度繰り返させた。
 フライヤは、同じ言葉を並べて繰り返した。
 本当に、極簡単な言葉だった。


 どうしても行きたいからとせがんだけれど、どうしても時間を取れないと言われて、それでもなかなか諦められなかった。
 フライヤが自分の代わりに行かせてくれようとしたけれど、俺だってそれをおいそれと受け入れるほど野暮じゃない。
 俺とビビは……友達、だったけれど。フライヤとビビは仲間だったんだから、俺なんかよりもっと駆けつけたいはずなんだ。


 ―――仲間が、死んだのだから。



 昔、親父が言っていた。
 死んだ人の魂は体という枷を離れて自由になるのだ、と。
 魂は自由に飛び回り、いつでも、どこへでも行くことができる。
 だから、その人のことを心に思えばいつでも会える。永遠の別れではない。
 母さまとは、いつでも会えるんだよ―――。


 ビビは、母と同じ場所へ行ったのだろうか。



             *



「ねぇ、パック。ボクたちはみんな、死んだらクリスタルへ還るんだよね」
 ビビがそう言った時、パックは思わずきょとんとして、ただ振り向いただけだった。
「何だよ急に?」
「あの……色々話を聞いていたらね、たぶんそうみたいなんだなって」
 ビビは麦わら帽子をのろのろと直しながらそう言った。
「クリスタルに記憶を預けて、また旅立っていくんだって」
「へぇ」
 そういう話を聞いたことがないわけではなかったけれど、あまり興味がなかったせいもあって、パックは曖昧な返事をした。
「クリスタルって、なんだか不思議なんだ」
「お前、実物見てきたんだろ?」
「……うん」
 もう一度帽子を直すと、ビビは空を仰いだ。
「たくさん、思い出すんだ。きっとボクが覚えていることじゃないことまで、全部思い出すの」
 雨の後の青空に似てるんだよ。ビビは、そう呟いた。



             *



 何日も降り続いた雨が、止んでいた。
 雨の後の青空が、少し気弱に、穏やかに微笑んだビビを思い起こさせた。

 ビビ。

 きっと、この青空を見上げる度に思い出すだろう。




 君の記憶を還したという、あの青い空を見上げる度に。



-Fin-








ビビの初めてのお友達だったパック。
そして、パックにとっても実はビビが
初めての「友達」だったんじゃないかなぁ…なんて思うのでした。

なぜかEDではビビの子供のことを知らなかった彼。
少なくとも、面識はなかったみたいですよね。。
うちの設定ではパックはブルメシアの若き国王になっているので、
なかなか時間が取れなかったのだろうなぁ、という感じになっています。

ということで、ビビの死にまつわる3連作でございました…!
これで少しはビビが…増えたようであんまり増えていない orz


2007.7.14





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