サンタと4人の子供たち
<1>
「お前ら、いい加減早く寝ろよ〜」
と、ブランクは小さな頭を四つ、ポンポンと叩いて回る。
「早く寝ないと、サンタさんが来てくれないっスよ」
「そうずら。子供はいい子にして、早く寝るずら」
父親たちの言葉に、子供たちは「えーっ」と抗議の声。
「まだ起きてたい!」
「いつもはもっと夜更かしするだろっ!」
ツインズが喚き始め、うんざり顔のラリは「先に寝てるずら〜」と、勝手に上がりこんでいった。
「ハリーはもう眠いんやんな?」
ルビィが抱き上げると、人見知りのハリーはちょっと泣き出しそうな顔になる。
今夜は両親共に教会の仕事があるため、ハリーは一人でタンタラスのアジトにお泊りしなければならない。
それでも友達がいるから、寂しくはなかった。
「悪いっスね、預かってもらっちゃって」
「なに水臭いこと言うてんねん。うちらとあんたの仲やないの」
「そうだぜ、マーカス。困った時はお互い様だろ?」
「すいませんっス」
マーカスはしきりに恐縮していたが、「そろそろ仕事の時間じゃないのか?」と言われ、慌てて飛び出していった。
「お父さんに行ってらっしゃいせんと」
ルビィに抱き上げられたまま、アジトの戸口から、ハリーは父親に小さく手を振った。
本当は心細いけど、我慢すると約束した。
父も母も亡くした子供たち、家族を失った人々が、この世にはたくさんいるのだから。
マーカスも走りながら振り返り、微笑んで手を振った。
「ハリー、いい子にしてたらきっとサンタさんが来てくれるっスよ!」
「うん!」
一生懸命手を振る小さな少年に、ルビィは感嘆した。
「ホンマに、あんたはええ子やねぇ」
それに引き換え、と。
アジトの中でギャースカ騒いでいる二人の子供を、彼女は呆れ返った目で見た。
「いい加減にしろ」
「いーやーっ! 絶対寝ない〜!」
「寝ない〜っ」
「……いい加減にしろ」
ハリーに子供部屋へ行くよう促してから、ルビィはこの見事なまでに進まぬ議論を断ち切るべく、父と子の間に割って入った。
「あんたら! 早う寝んかいボケ!」
ゴツン×2。
「「いったぁ〜(涙)」」
「夜更かししたいなんて十年早いわ。生意気なことは一人前になったら言いや!」
「「……はぁい」」
母親の剣幕に、双子はすごすごと子供部屋へ戻っていった。
揃って頭をさすりながら。
それを見送ってから、ブランクがぼそりと呟いた。
「あいつら、今年はやけに粘るな」
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