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「あったま来ちゃう!」
 と、リアナは憤慨している。
 なんでジェフリーと一緒に頭を殴られる羽目になるのだ。
「いつものことじゃん」
 と、ジェフリーは何食わぬ顔でプレゼントの包みを開けていた。
 今日、クリスマスのお祝いにと貰ったガラクタ類。
 でも、子供にとっては楽しいおもちゃだ。
「毎年毎年、よく頑張るずら」
 ラリは寝返りを打って、彼らを見た。
 子供部屋にはもう一台二段ベッドが増えていた。
 増えたベッドにはラリとハリーが泊まるのだ。
 ラリがアジトに泊まることは少なくなかったが、四人揃うのは珍しかった。
「だって、絶対会ってみたいじゃない、サンタさん」
 リアナは目を輝かせた。
「サンタクロースなんていないずら」
 ラリはじと目になって、夢のないことを言う。
「だ・か・ら! 絶対証拠押さえてお前をびっくりさせてやるんだって」
 ジェフリーは鼻息も荒くやる気満々。
「どうやってっスか?」
 ハリーも身を乗り出した。
「例えば……髭を少し切ってもらうとか」
「そんなサービスしてくれないずら」
「じゃぁ……サイン貰う!」
 なるほど、と全員が頷いた。
「それなら、疑う余地もないずら」
「だろ? 絶対頑張るんだ、今年こそ!」
「去年は十時でダウンしたけどね、ジェフリー」
「―――っ! 姉ちゃんだって結局会えなかったんだろ?」
「……まぁね」
「今年は何時まで頑張るずら?」
 ラリが尋ねた。
「そりゃぁ、サンタさんが来るまでさ」
「事前の調査では―――」
 と、リアナはメモ帳を開く。
「この辺りの家では、十二時から六時の間に来ると思うわ」
「地域によって違うずら?」
 ラリはますます呆れた目で見る。
「そりゃ、そうだろ。サンタさんだって順番にプレゼント配るんだし」
「そうっスよね〜」
 と、ハリーが感心した時。
 コンコン、とドアをノックする音。
 子供たちは顔を見合わせた。
「もしかして……」
「サンタさん?!」
 ジェフリーが駆け寄ってドアを開けると。
「メリークリスマス♪ 良い子がいるのはこの部屋かな?」
「わ〜、サンタさんっス!」
 と喜んだのは、ハリーだけ。
「……ジタンおじさん」
「何やってんだよ……」
 年嵩の子は全員白い目。
「ありゃ? お前らおととしは喜んだのにな」
 と、ジタンは赤い帽子と髭を取った。
「俺たち、もうそんなに子供じゃないもん」
「そうずら」
 びっくり眼のハリーの頭を撫でてから、ジタンは「へ〜」と面白そうに笑った。
「じゃ、オトナな皆さんはプレゼントなんていらないか」
 残念そうに肩を竦める、と。
「「「いるっ!」」」
 三つの声が、見事なまでにハモった。



「ほい、ジェフリー。お前カードゲーム好きだろ?」
「うん! ありがとう、オジキ♪」
「リアナは戯曲でいいのか? お前の母さんが最近本が好きだって言ってたけど」
「うん! ありがとう、おじさん♪」
「ラリは、道具箱な」
「わ〜いずら! ありがとうずら!」
「ハリーには……ほら。動物図鑑だぞ」
「ありがとうっス!」
 全員目がキラキラ。
 ジタンは満足そうににっこり笑った。
「よし。それじゃ、みんなぐっすり寝るんだぞ」
「「ヤダ!」」
 双子がプレゼントから顔を上げ、きっぱりと言う。
 ジタンは軽くコケた。
「なんで?」
「サンタさん見るって、うるさいずら」
 ラリが訴えた。
「なるほどな……ククク、お前ら頑張れよ! オレは応援してるからな」
「「うん! 頑張る!」」
 ジタンは愉快そうに笑いながら、「じゃ、お休み」と去っていった。






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