<2> 『あはははは!』 「笑いごとじゃないって。どうすんだよ」 『どうしようもないわね』 「ダガー!」 無線室。その日の執務状況を知らせるついでに、ジタンはガーネットにその騒動を打ち明けた。 ガーネットは外交関係の仕事でリンドブルムにおり、クリスマス・イヴの夜にならないと帰ってこられないのだ。 『たぶん、ベアトリクスのところに持っていくんじゃないかしら、あの子』 「だったらいいんだけどな」 『とにかく、一人で何とかしてみて、ジタン』 「絶対ムリ」 ガーネットはクスクスと笑っている。 「なぁ、早く帰って来れないのか?」 『それこそ無理よ。ちょっと手間取ってるの』 「―――なんかマズイことでもあったか?」 『いいえ、大丈夫。イヴにはちゃんと帰れると思うわ』 「……そっか」 サファイアのことでも早く帰ってきて欲しかったけれど。 もちろん、理由はそれだけではなかった。 『そういう訳だから。頑張ってね、寂しがりやのお父さん』 考えていたことが伝わったらしい。 「はいはい、仕事熱心なお母さん」 ガーネットの笑い声の途中で、通信は切れた。 *** 「いえ、そのようなものはいただいておりませんが」 ベアトリクスは首を傾げて答えた。 「うぁ〜、やっぱりか」 項垂れるジタン。 サファイアは、欲しいものを描いた絵手紙をベアトリクスのところには持ってきていないらしい。 「どうかなさったのですか?」 「……どうもこうもさぁ」 ジタンは事の次第を話して聞かせた。 ベアトリクスは笑っている。 「笑いごとじゃないんだってば、マジで!」 ただでさえすぐにヘソを曲げる我が侭な末っ子。もし欲しかったものと違うものを貰おうものなら、たっぷり泣き喚くことだろう。 「そういうことなら、お力添えしましょう」 と、ベアトリクスは笑いながら申し出てくれた。 藁にも縋りたいジタンには、願ってもない申し出だった! とりあえずベアトリクスと手分けしてサファイアの足跡を追うことになり。 「―――サフィー」 ジタンは彼女の部屋に顔を出した。 ……いない。 ただし、絨毯の上にはクレヨンが散らばっていた。 「もう描いた、ってことだな、とりあえず」 ジタンは部屋を出て、サファイアの行きそうなところを回ってみた。 庭、にはエメラルドがいて、薔薇の手入れをしていた。 「よ、精が出るな」 「お父さま! どうなさったの?」 「いやさ。サフィー、見なかったか?」 「いいえ、見てませんけど」 こっちではないらしい。 「なぁ、エミー」 「はい、お父さま」 「サフィーがサンタに何を頼んだか、お前知ってるか?」 「いいえ、存じません」 「―――そっか」 見るからにがっかりした父親に、エメラルドは首を傾げた。 「でも、ダイアンなら知っているかも」 「そうか?」 「ええ。あの子たち、何かこそこそ相談していたみたいだし」 ジタンはふむ、と頷いた。 |