<6> クリスマスの朝。 三人分の幼い足音が女王の間への廊下を走ってくる。 ガーネットは髪を梳かしていたブラシを鏡台に置いて、座ったまま振り向いた。 「おかあさま〜〜!!」 と、重い扉を押し開けて真っ先に飛び込んできたのは、末っ子。 「ちょっとサフィー、お母さまはまだお休みかもしれないんだから、静かにしなさいったら!」 続いて、しっかり者の長女。 ガーネットが既に起きていたので、彼女は安心した顔で立ち止まった。 しんがりはのんびり屋の長男。 まだ目をこすっている。 「おはよう、エミー、ダイアン、サフィー」 母親の笑顔にほっとした子供たち。 口々に朝の挨拶をする。 そして。 早速甘えモードのサファイアは、ガーネットの膝によじ登ろうと飛び跳ねだした。 「あのね、おかあさま。サンタさん、ちゃんと来てくれたの!」 「そう、よかったわね。それで、何を貰ったの?」 「クマさん!」 目的の場所まで辿り着くと、父親そっくりの瞳でガーネットの黒い瞳を覗き込んだ。 「おかあさま、お元気になった?」 「ええ、もう大丈夫よ」 「本当、母上?」 と、未だ心配顔のダイアン。恐る恐る傍まで来た茶色い頭を撫でながら。 「本当よ。みんな、心配かけてごめんなさいね」 エメラルドを手招きして、ガーネットは一人一人に笑いかけた。 「ねぇねぇ、おとうさまは?」 サファイアは母親の微笑みにすっかり安心し、部屋を見回す。 「まだお休みになってるわよ」 「お父さま、お母さまがいらっしゃらない時もいつもお寝坊さんだったのよ」 エメラルドは少し口を尖らせて訴えた。 「あらあら。それじゃぁ、毎朝あなたたちが起こしてくれたのかしら?」 「うん!」 サファイアはぴょんっとガーネットの膝から飛び降り、悪戯そうな瞳を輝かせて兄を見た。 ダイアンも、つられて悪戯そうに笑う。 二人は大声で父を呼びながら、同時にベッドの小山目掛けてダイブするのだった。 「おとうさま〜!」 「父上〜!」 ……といった具合に。 しかし、常と変わらず、それくらいではびくともしない。 「お父さま〜、起きて起きて〜!」 「父上父上!」 バタバタと大暴れの弟妹に苦笑を送り、エメラルドは母親を見つめた。 「なぁに、エミー?」 娘の視線に気付き、ガーネットは首を傾げる。 エメラルドはにっこりと微笑んだ。 「お母さま、お父さまがお傍にいらっしゃる時が一番お綺麗ね」 「そう?」 と、思わず頬に両手を当てるガーネット。 エメラルドはニコニコと肯いた。 「それにね、お父さまも、お母さまがいらっしゃらないといつものお元気が出ないみたい」 ……すこぶる鋭い洞察力は一体誰に似たのだろうと、ガーネットは刹那、思い耽ったのだった。 ようやっと、渋々と起き上がった父親の耳を引っ張る末っ子。 「痛い痛い。なんだ、サフィー」 と、屈み込んで耳を寄せれば。 「あのね、おとうさま。サンタさんね、サフィーのお願いちゃんと聞いてくれたよ」 こっそりと耳打ちする。 「そっか、よかったな」 「うん。でもね、サンタさん、クマさんもくれたよ? 二つもお願い聞いてもらっていいのかなぁ?」 ジタンはふと頭を上げ、無邪気な青い瞳を見つめた。 「う〜ん、それはさ。サフィーがとびきりいい子だから、サンタさんがおまけしてくれたんだよ、きっと」 「ホント? サフィー、いい子?」 「ああ、サフィーは優しくていい子だ」 軽々と抱き上げられ、サファイアは嬉々としてきゃぁきゃぁと歓声を上げた。 大はしゃぎの妹にびっくりして目を見開くダイアン。 「ほら、ダイも」 「わぁ!」 突然抱き上げられ、ぎゅっと腕にしがみつく怖がりの息子に思わず失笑してしまう。 「エミーもダガーもおいで。おしくら饅頭だ!」 「なぁに、それ? おいしいもの?」 父親の肩に抱えられたまま、青い目を母に向ける末娘。 ガーネットは笑いながら首を振った。 「美味しいんじゃなくて、楽しいもの、かしらね」 「うん、楽しい!」 にこにこ顔のサファイア。 それはそれは微笑ましい、家族の姿だった――― が。 サファイアがジタバタ振り回していた左足がダイアンの顎にクリーンヒットしたらしく、ダイアンは火がついたように泣き出した。 「わ〜ん!」 「ダ、ダイアン? 大丈夫? どこが痛いの?」 と、わんわん泣く長男の頭を慌てて撫でる母、ガーネット。 「ほら、泣かないのよ。痛くない痛くない」 母を真似るのは、姉、エメラルド。 しかし、それくらいで泣き止む彼ではない。 「うわ〜ん」 「……サフィー、とりあえず謝っとけ」 「お、おにいさま、ごめんね」 「うわ〜ん」 「……」 一体誰に似たのかしら、この泣き虫加減は―――。 と、ごく小声で呟いた妻の言葉に、必死でポーカーフェイスを貫くある盗賊がいましたとさ。 ―――Merry Xmas♪ -Fin- ふぅ、何とかクリスマスに間に合いました〜(^^;) とんでもなく駄作な気がしますが・・・(汗) ご一家のある冬の一コマでしたv と言うより、結婚10年目のラブラブ夫婦・・・?(笑) いやはや、毎回そうなんですが、 今回は特に腹くくって頑張りました、甘甘振り(どこがだ!) え〜、ありがちな展開ですが、ありがちもまた一興(コラ−−;) うちではこの展開ってなかなか見込めないので、 クリスマス特別バージョンジタガネかも?(はい?) あ〜、穴掘って入りたいです。。。皆さま、良いクリスマスをお過ごし下さい(何) 来年は宿り木とかの話を書きた〜〜い(><) 注)クリスマス過ぎてもこの小説、しつこく飾りますのでv(滝汗) 2002.12.24 |