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 クリスマスの朝。
 三人分の幼い足音が女王の間への廊下を走ってくる。
 ガーネットは髪を梳かしていたブラシを鏡台に置いて、座ったまま振り向いた。
「おかあさま〜〜!!」
 と、重い扉を押し開けて真っ先に飛び込んできたのは、末っ子。
「ちょっとサフィー、お母さまはまだお休みかもしれないんだから、静かにしなさいったら!」
 続いて、しっかり者の長女。
 ガーネットが既に起きていたので、彼女は安心した顔で立ち止まった。
 しんがりはのんびり屋の長男。
 まだ目をこすっている。
「おはよう、エミー、ダイアン、サフィー」
 母親の笑顔にほっとした子供たち。
 口々に朝の挨拶をする。
 そして。
 早速甘えモードのサファイアは、ガーネットの膝によじ登ろうと飛び跳ねだした。
「あのね、おかあさま。サンタさん、ちゃんと来てくれたの!」
「そう、よかったわね。それで、何を貰ったの?」
「クマさん!」
 目的の場所まで辿り着くと、父親そっくりの瞳でガーネットの黒い瞳を覗き込んだ。
「おかあさま、お元気になった?」
「ええ、もう大丈夫よ」
「本当、母上?」
 と、未だ心配顔のダイアン。恐る恐る傍まで来た茶色い頭を撫でながら。
「本当よ。みんな、心配かけてごめんなさいね」
 エメラルドを手招きして、ガーネットは一人一人に笑いかけた。
「ねぇねぇ、おとうさまは?」
 サファイアは母親の微笑みにすっかり安心し、部屋を見回す。
「まだお休みになってるわよ」
「お父さま、お母さまがいらっしゃらない時もいつもお寝坊さんだったのよ」
 エメラルドは少し口を尖らせて訴えた。
「あらあら。それじゃぁ、毎朝あなたたちが起こしてくれたのかしら?」
「うん!」
 サファイアはぴょんっとガーネットの膝から飛び降り、悪戯そうな瞳を輝かせて兄を見た。
 ダイアンも、つられて悪戯そうに笑う。
 二人は大声で父を呼びながら、同時にベッドの小山目掛けてダイブするのだった。
「おとうさま〜!」
「父上〜!」
 ……といった具合に。
 しかし、常と変わらず、それくらいではびくともしない。
「お父さま〜、起きて起きて〜!」
「父上父上!」
 バタバタと大暴れの弟妹に苦笑を送り、エメラルドは母親を見つめた。
「なぁに、エミー?」
 娘の視線に気付き、ガーネットは首を傾げる。
 エメラルドはにっこりと微笑んだ。
「お母さま、お父さまがお傍にいらっしゃる時が一番お綺麗ね」
「そう?」
 と、思わず頬に両手を当てるガーネット。
 エメラルドはニコニコと肯いた。
「それにね、お父さまも、お母さまがいらっしゃらないといつものお元気が出ないみたい」
 ……すこぶる鋭い洞察力は一体誰に似たのだろうと、ガーネットは刹那、思い耽ったのだった。


 ようやっと、渋々と起き上がった父親の耳を引っ張る末っ子。
「痛い痛い。なんだ、サフィー」
 と、屈み込んで耳を寄せれば。
「あのね、おとうさま。サンタさんね、サフィーのお願いちゃんと聞いてくれたよ」
 こっそりと耳打ちする。
「そっか、よかったな」
「うん。でもね、サンタさん、クマさんもくれたよ? 二つもお願い聞いてもらっていいのかなぁ?」
 ジタンはふと頭を上げ、無邪気な青い瞳を見つめた。
「う〜ん、それはさ。サフィーがとびきりいい子だから、サンタさんがおまけしてくれたんだよ、きっと」
「ホント? サフィー、いい子?」
「ああ、サフィーは優しくていい子だ」
 軽々と抱き上げられ、サファイアは嬉々としてきゃぁきゃぁと歓声を上げた。
 大はしゃぎの妹にびっくりして目を見開くダイアン。
「ほら、ダイも」
「わぁ!」
 突然抱き上げられ、ぎゅっと腕にしがみつく怖がりの息子に思わず失笑してしまう。
「エミーもダガーもおいで。おしくら饅頭だ!」
「なぁに、それ? おいしいもの?」
 父親の肩に抱えられたまま、青い目を母に向ける末娘。
 ガーネットは笑いながら首を振った。
「美味しいんじゃなくて、楽しいもの、かしらね」
「うん、楽しい!」
 にこにこ顔のサファイア。
 それはそれは微笑ましい、家族の姿だった―――
 が。
 サファイアがジタバタ振り回していた左足がダイアンの顎にクリーンヒットしたらしく、ダイアンは火がついたように泣き出した。
「わ〜ん!」
「ダ、ダイアン? 大丈夫? どこが痛いの?」
 と、わんわん泣く長男の頭を慌てて撫でる母、ガーネット。
「ほら、泣かないのよ。痛くない痛くない」
 母を真似るのは、姉、エメラルド。
 しかし、それくらいで泣き止む彼ではない。
「うわ〜ん」
「……サフィー、とりあえず謝っとけ」
「お、おにいさま、ごめんね」
「うわ〜ん」
「……」
 一体誰に似たのかしら、この泣き虫加減は―――。
 と、ごく小声で呟いた妻の言葉に、必死でポーカーフェイスを貫くある盗賊がいましたとさ。



 ―――Merry Xmas♪



-Fin-



ふぅ、何とかクリスマスに間に合いました〜(^^;)
とんでもなく駄作な気がしますが・・・(汗) ご一家のある冬の一コマでしたv
と言うより、結婚10年目のラブラブ夫婦・・・?(笑)
いやはや、毎回そうなんですが、
今回は特に腹くくって頑張りました、甘甘振り(どこがだ!)
え〜、ありがちな展開ですが、ありがちもまた一興(コラ−−;)
うちではこの展開ってなかなか見込めないので、
クリスマス特別バージョンジタガネかも?(はい?)
あ〜、穴掘って入りたいです。。。皆さま、良いクリスマスをお過ごし下さい(何)
来年は宿り木とかの話を書きた〜〜い(><)

 注)クリスマス過ぎてもこの小説、しつこく飾りますのでv(滝汗)
2002.12.24







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