オレとあいつは同じだ、って思ってた。

 親の顔を知らなくて、故郷がどこかも知らなくて、でも、同じだからいいと思ってた。

 一人じゃないって思えたから。

 オレだけじゃないって思ったから。

 ……なのに。

 カミサマって奴はイジワルだ。

 あいつだけ、親の行方がわかるなんて―――








Tantalus' Panic! 1796    〜Best Friend〜




 秋に差し掛かったある日のこと、バクーはブランクに、彼を捨てた親の居所が知れたと告げた。
「会いに行くか?」
「―――いい」
 ブランクは俯き、小さく頭を振った。
「行かないずら?」
「なんでっスか、兄キ」
「文句言ってきたったらええやんか!」
「おめぇらは黙っとけ。自分で決めりゃいいんだ、そんなことは」
「でも……!」
「ブランク、本当に行かねぇのか」
 バクーに問われ、ブランクは俯いたまま頷いた。
「おう、ならそれで話は終わりだ。ほら、おめぇらもさっさと持ち場に戻れ」
 タンタラス連は、全員ブーブー言いながら芝居の稽古に戻った。
 ただし、一人を除いて。
「何ぼんやりしてやがる、ジタン」
 はっと顔を上げ。
「何でもない!」
 逃げるように走り去っていった。








 気付いた時にはタンタラスにいて、いつの間にかそれが当たり前になっていた。

 でも、心の中にいつも在った、あの青い光。

 故郷の色。

 いつかはそこに帰りたいと思っていたけれど、でも。

 そんな気持ちなど、目まぐるしくてエキサイティングな日常の中でのほんの小さな感傷でしかなく、特に強く心を占めていたわけではなかった。

 タンタラスに入った時からいつも一緒にいたブランクとは、兄弟よりも強い絆で繋がっていると思っていたし、実際、血なんてどうでもいいと思えた。

 そこが『居場所』だった。


 絶対的に、そこだけが自分の在るべき『居場所』だった。







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