<3>



 はぁ、と、ブランクが盛大に溜め息をついた。
 聞きとがめたルビィは、皿洗いを中断してその顔を覗き込んだ。
「どないしたん?」
「……いやさ。なんか最近、避けられてる気がするんだよな、俺」
「ジタン?」
 ブランクは肯きで返答した。
「まぁ、うちにもそう見えるけど」
「なんかしたかなぁ、俺」
「―――鈍感」
 ルビィは、茶布巾を投げる。
「グダグダしてへんで、あんたも手伝うたら?」
 ブランクはむっとした顔をする。
「なんだよ、鈍感って」
「それがわからんから鈍感言うてんねん」
「だから、何なんだよ! 俺が何わかってないってんだ?」
「知らんわ! そんなん自分で考えたら!?」
 ガタン、と椅子を蹴飛ばすと、ブランクは飛び出していった。
 ルビィは腰に手を当てたまま、溜め息をついた。
「大事に、ならへんとええけど……せやからあの子嫌いやって言うたのに」








 ジタンの様子がおかしくなったのは、たぶんひと月くらい前からだ。

 それまでは普通だった。至って普通で、普通にふざけて笑い合ってた。

 あの子が来なくなってからだ。

 あいつがおかしくなったのは。

 きっと、またフラれたんだろって簡単に考えてたけど。

 もしかしたら、いつになくマジだったのかも知れない。

 ―――でも。

 なら、どうして俺だけを避けるのかわからない。

 たぶん、何か気に障ることを言っていたのかも知れない。

 ……でも、何も聞き出せない。

 あいつは、目を合わせようとしない。

 話そうともしない。

 こんなこと、初めてだ。

 どうしたらいいか、全然わからない。

 どう接すればいいんだろう……?







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