<6>



 突然、ブランクはあの少女に呼び出された。
 ジタンが毎日のようにアジトに連れてきて、一ヶ月前からパタリと来なくなった、あの子に。
「何か用か?」
 かなり無愛想に用事を尋ねる。
 少女は、幾分赤く染まった頬で、しばらくもじもじと黙っていた。
「用がないなら帰るけど」
「待って!」
 必死に引き止める声。
「あの……話があるの」
「何?」
 ブランクは一瞬、ジタンのことではないかと思った、が。
 彼女は、彼には幾分意外なことを口走った。
「……私、あなたが好きなの」
 少女は俯いたまま、その割りにはっきりとそう告げた。
 言葉の意味そのものを理解するのは難しくなかったが、その背景までを考えあぐねるのにしばらく時間が掛かった。
 ―――つまりは。
「それ、ジタンにも言ったのか?」
「え? ……ええ」
 少女は、貰った返答が的外れだったので少し戸惑ったように頷いた。
 苛立った茶色い瞳が少女から逸れる。
 それで。
 それで、あいつは出て行ったのか。
「あの、ブランク?」
「悪いけど、あんたと付き合う気はないから」
 途端に、泣き出しそうになる少女。
「……どうして?」
 ―――どうして、だと?
 ブランクはひどく腹が立ってきた。
 人一人傷つけておいて、何も知らずにのうのうと。
「ジタンがあなたのお友達だから?」
「関係ない」
 正確に言えば、関係ないわけではなかったけれど。
「じゃぁ、どうして?」
 ブランクは溜め息をついた。収まらない怒りが爆発しないように。
 爆発したところで、自分は一向に構わないと思ったが。
「あんたみたいな子、俺は好きじゃない」
「他に好きな人がいるの?」
 可愛い顔をして、食い下がってくるのさえ腹が立つ。
「そういうわけじゃ……」
 ブランクが言い掛けた時。
「そうやで!」
 と、聞き慣れた声。
 少女は、声の方を振り向いた。
「ルビィ?」
「馴れ馴れしく呼ばんといて」
 ぴしゃりと、跳ね除ける。
「あんた、泥棒猫ちゃうのん? ブランクはうちとラブラブやねん、邪魔せんといて」
「な―――」
「うるさい、あんたもはっきり断ったらどうやねん、このアホンダラ!」
 口を挟もうとしたブランクの前まで行くと、腰に手を当てて怒鳴り声を上げるルビィ。
 その目は、しかし怒ってはおらず。
 ……彼女の怒っている目なら、何度も見たからわかる。
 ブルーグレーの瞳は、上手くやれ、と言っているようだった。
「嘘よ!」
 少女は金切り声を上げた。
「嘘やと思うんなら、誰かに聞いたらええやんか。タンタラスの奴らならみんな知っとるから」
「ひどい……!」
 少女はルビィに歯向かった。
「何がひどいねん。あんたの方がよっぽどひどいわ。もううちらに構わんといて。行こ、ブランク」
 ぎゅっとブランクの腕を掴み、ルビィはさっさと歩き出す。
 少女は泣き声を上げてその場に蹲ったが。
「アホ、振り返らんでええの。放っとき」
 ルビィがそう注意した。






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