<7> 劇場街まで戻ってくると、ようやくルビィはブランクの腕から手を離した。 「あんた、何ボサッと告白されとんねん、アホ」 「―――知ってたのか」 「当たり前や。あの子、あんな見え見えの態度しよってからに」 ルビィは、今度は間違いなく怒った目をしていた。 「ジタンもあんなんにええように利用されて、せやから男はアホやねん」 ……言い返す言葉も見つからない。 でも、たぶんあの子にもそこまで悪気があった訳ではないだろうと、ブランクは思った。 実際、無邪気な雰囲気の子だった。 ―――その無邪気さが、彼の怒りを買ったのもまた真実だったが。 「あそこまで言わなくてもよかったんじゃないか?」 小声で言ってみると。 「せやからあんたは鈍感やねん」 と、ルビィの怒号。 「ヘンにフッてみぃ、ジタンのこと逆恨みしよるで。それに、恋人がおるって言うたらもう二度と寄って来ぃへんやろし。後々面倒も起きんで好都合やん」 ルビィは自分で自分に肯き、ブランクを見た。 ブランクは俯く。 後々起こる面倒ごと―――つまりは、ジタンが帰ってきたときに起こるかも知れない、ゴタゴタ。 でも、と。ブランクは暗い気持ちになった。 でも、ジタンはもう…… 「帰ってくるんやろ、ジタン」 キッパリと、ルビィ。 え? と、ブランクは顔を上げた。 「あんたそう言うとったやない、この間。せやから、うちもジタンは帰ってくると思うんや。あんた、一番ジタンのことわかっとるし」 ―――確かに。 ジタンが出て行ったことを知った日、バクーは「もう戻らない気かも知れない」と言ったが。 ブランクは頑なに、帰ってくると反論したのだ。 帰ってくるから、タンタラスを破門にしないで欲しい、と。 でも。 それは、ある意味ただの強情張りだった。 いつか帰ってくると信じずにはいられなくて、同じ場所にいることをやめたくなくて。 ジタンの気持ちを考えてそう言ったわけではない。 事実、その晩落ち着いて考えたら、帰ってくるのどうかわからない、と思ったのだし…… 「ほら、ボケッとしてないで早う帰るで。まったく、この貸し高うつくでぇ、ブランク」 と、勝手に割り込んで勝手に話をつけたというのに、ルビィは何をしてもらおうかと指を折って数え始めた。 ジタンの話はこれで終わり。帰ってくるに決まっている……とでも言うように。 ―――そうだった。 俺たちは、こうやって支えあって生きてきたんだった。 その事実は、それだけは、例え何が起きても変わらない。 ブランクは、小さく溜め息をついた。 「……ありがとう、ルビィ」 思わぬ謝礼を受けた本人は、振り向いてびっくり眼。 「何ぃ? 気持ち悪いわぁ。そんなん言うたって、貸し負からんで?」 その言葉にクスクスと笑いを漏らし、まぁいいか、と独りごちる。 余計に気味悪がってルビィは先に走って帰っていってしまった。 その、背中を見ながら。 ―――きっと帰ってくる。 と。今度は強情ではなく、はっきりそう信じたいと思った。 あいつは帰ってくる。 ……この、タンタラスに。 -Fin- なんか、既にブラルビの雰囲気になってますけど・・・一応まだ違うんで(笑) 連載形式でお送りさせていただいたこの駄小説も今日が最終回です(^^;) 終わり急いだ感は否めませんが、一応終わりです(苦笑) 今回の言い訳はここでしようと手薬煉引いておりましたv(・・・) ブランクとジタンの友情のお話でしたが(そうか?)、彼らって友達以上兄弟未満って感じだよなぁ、と。 いや、兄弟に限りなく近いかも・・・大親友、っていうのともちょっと違うかなぁ。 私の設定ではジタンがタンタラスに入ったときからの仲なので、 ジタンが家出したときにはブランクは随分気を揉んだんじゃないかと思いまして(^^;) こんな感じに仕上がりましたですm(_ _)m この続き、ジタン側は次の小説「この世に生を受けた意味」で見ることが出来ます。 特におまけなんてホントタンタラスだもんなぁ・・・ご興味をお持ちの方はぜひv 2002.12.9
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