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 草を踏み分けて来た背の高い竜騎士に、ジタンはふと目を向けた。
 彼女が意味ありげに微笑むと、途端、気恥ずかしそうに目線を逸らした。
「まだここにおったか」
 と、フライヤは話し掛けた。
「―――だって、フライヤが忘れものするから」
「届けに参ればよかったではないか」
 ジタンは黙して答えなかった。
「おぬしの育ったタンタラスに行ってきたぞ」
 フライヤは側の岩に腰を下ろしながら言った。
 驚いた目で、彼女を振り返る少年。
「心配しておったのう。もう少しで、おぬしがここにいることを言おうかと思うたほどじゃ」
「……言わなかったの?」
「公平でないと思ったのでな」
 ジタンはほっと吐息をつき、フライヤの側に座った。
「―――わざと置いていったんだろ、これ」
 と、竜の勲章をフライヤの目の前に突き出す。
「さぁ、どうであったかのう」
「ふざけるなよ」
 ジタンはキッとフライヤを睨んだ。
「なんで、そうやってオレのことバカにするんだよ!」
「馬鹿になどしてはおらぬ」
 苦笑混じりの翠色の目が、海のような青い瞳を捕らえる。
 泣き出しそうな瞳は幼くてあどけなかったが。
 しかし、必死に生きることを主張し、必死に意地を張っていた。
 そう。その瞳は、強く光る魂の炎そのものだ。

 フライヤは溜め息をつくと、腕を伸ばして幼さの残る肩を抱き寄せた。
 一瞬何が起きたのか理解できなかったジタンは、次に思い切り抵抗を始める。
「―――離せ!」
 フライヤはものともせず。
「ほれ、じっとせぬか。おぬしが言うたのであろう、母のように抱き締めて欲しいと」
 少年の肩がぴくりと震え、やがて静かになった。
 夕闇色の風が吹いて、薄い霧が白を吐きながら過ぎていった。
 ―――静かだった。
 金色の頭を撫でてやりながら、フライヤは小さく囁いた。
「おぬしはよい子じゃ」
 ジタンがわずかに身じろぎした。
「おぬしは真っ直ぐな目をしておる。未来へ向かうよい目じゃ。将来、きっと幸せを手にすることが出来ようぞ。それに、おぬしの探す故郷も、きっといつか必ず見つかる。おぬしがこの世に生を受けた意味も、きっと探し当てることが出来る。大丈夫じゃ」
 まだ育ちきらない子供っぽい手が、フライヤの服をきゅっと掴んだ。
 フライヤはふっと微笑んだ。
「おぬしは日溜まりの匂いがするのう。太陽の中で育った証拠じゃな」
「フライヤは雨の匂いがする」
「ブルメシアの人間じゃからな、当たり前じゃ」
 ジタンはぐっと腕を伸ばし、フライヤから離れた。
「もうよいのか?」
「―――うん」
 俯いたまま返事する。
「帰る気になったか?」
「―――」
「ジタン」
 フライヤは諫めるように呼び掛ける。
 俯いたままの少年に、一つ溜め息を送った。
「まだわからぬか。おぬしの帰る場所はたった一つじゃろう。故郷は故郷、帰る場所は帰る場所じゃ」
「―――うん」
「ほれ、そのように情けない顔をするな。旅の目的は達成したではないか」
「え?」
 目を見開いて、ジタンは顔を上げた。
「心の故郷がタンタラスじゃと、旅を通して気付いたじゃろうが。おぬしは故郷を見つけた。笑顔で『ただいま』と言える場所を」
 ジタンはぼんやりとフライヤの顔を見つめていたが、やがて頷いた。
「―――うん」
 フライヤはにっこりと微笑んだ。



***



 夜が過ぎて朝になり。
 霧の合間から朝日が輝き、露に濡れた草原をキラキラと照らした。
「ほれ、早く行くのじゃ。私はここで見届けておるからの」
「―――うん」
 ジタンは自分の荷物を肩に掛け、とぼとぼと数歩歩いて立ち止まった。
「なんじゃ」
 くるりと振り向く。
「あの―――フライヤ。その……ありがとう」
 フライヤは微笑んだ。
「私こそ、おぬしにはいろいろと助けられた」
「―――え?」
 ジタンは首を傾げた。
「オレ、フライヤ助けたことなんてあったっけ?」
「おぬしの真っ直ぐな言動のお陰で、いろいろと面倒を被ったがのう」
 と、フライヤは笑った。
 当然、ジタンはむっとして頬を膨らませる。
「―――反面、いろいろと気付かされることが多かったのも事実じゃ。長い旅路の間に忘れ去っていた心を取り戻すことが出来た。礼を申すぞ」
 困ったような表情で自分を見つめる少年に笑いかけ、フライヤは、ほれ、と声をかけた。
「早う行かぬか。日が暮れるぞ」
 しばらく立ち竦んでいたジタンは、やがて頷いて踵を返し、リンドブルムへ向かって歩き出した。
 しかし、また途中で立ち止まって振り返る。
「フライヤ!」
「なんじゃ」
「―――きっと見つかるよ、フライヤの恋人!」
「余計なお世話じゃ。子供は黙っておれ」
 肩を竦めた竜騎士に、少年は小憎らしく舌を出し、また振り向いて走り出した。
 その背中を見送りながら、フライヤは小さく息をつき、微笑んだ。
「―――さて、行くかの」
 そう。きっと、どこかで待っているはずの……心の、帰る場所。


 ―――この世に生を受けた意味である、あの人のところへ。

-Fin-





え〜っと。マジでフラジタ?(爆笑) 何度も言いますが、そんなつもりは全くありません(笑)
う〜む。ここまで関わっておいたら、フライヤもDISK3でテラに行ったらすぐに
そこがジタンの故郷ってわかりそうなもんなのだが。・・・「どうしたのじゃ?」とか
涼しい顔で聞いてますな、姐さん。・・・いや、お前の創作がおかしいんだろうが、せい(−−;)

一番こだわったのは、この後二人が再会するところに上手くつなげる雰囲気です。
雰囲気ね、雰囲気(笑) あの、「ああ、ネズ美か〜!」につなぐ感じ。
おふざけ放題だけど何となくお互いがわかってる照れくさい感じです(はい?)
しかも、EDでフライヤが「おぬしの性格をわかっていると思っていたが・・・」
なんて言うじゃないっすか〜v だから、結構踏み込んだな、これはと。
喜び勇んで出来た小説が、これ(^^;) しょうもな〜(笑)
ジタン少年、もちょっと母性くすぐる感じにしたかったな〜・・・(何!?)

をを、忘れるところだった! このお話、おまけつきで〜すv
お読みになりたいとおっしゃるありがたい方はこちらか↓からv
お約束でタンタラス出ちょります(笑) ついに約束事になってるし(^^;)
2002.10.2




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