新しい朝


 カーテン越しに太陽の光を感じて、ガーネットは目を覚ました。
 隣でぐっすり眠っている人間を起こさないように注意しながら、彼女はベッドをするりと抜け出す。
 ほんの少しカーテンを引くと、地平線の上を、太陽が燦燦と輝いているのが見えた。
 新しい、朝。
 ガーネットは窓を開け放つ。
 初夏のさわやかな風が彼女の側をすり抜け、その長い黒髪をふわふわと散らして部屋へと滑り込んできた。
 深く吸い込んだ朝の空気は澄んでいて、微かに花のような甘い香りがする。
 ガーネットは穏やかに微笑んだ。

 ベッドに戻ってみると、彼のほうは相変わらずぐっすり眠っていた。
 早起きの彼女。
 ネボスケの彼。
 カーテンから透ける微かな朝の光の中、起きているときよりもずっと幼くあどけないその寝顔を、彼女は飽きもせずに眺めていた。
 愛しい人。
 目を細めて微笑みながら、ガーネットは光を放つ金髪にそっと触れる。
 と。
 途端に、伏せられていた瞼が上がって、眠たそうな青い目が現れた。
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
 風のように囁いたとき。
 本物の風がカーテンをふわりとはためかせ、たった今目覚めたばかりの彼の顔に、強い太陽の光がもろに当たってしまう。
 ジタンは眩しそうに、目をぎゅっと閉じた。
「ん―――……?」
 寝惚けた声が抗議する。
 ガーネットは慌てて太陽とジタンの間に入り、影を作ってやってから、笑い出した。
 片目だけ開け、非難がましい顔をするジタン。
「なんだよぉ……」
 ガーネットはくすくすと笑いながら軽く首を横に振り、やっと笑うのをやめてから、にっこり微笑んで言った。
「おはよう、ジタン」
「……おはよう。何してたの?」
「あなたの可愛い寝顔を見ていたのよ」
 カワイイだと?
 ジタンは拗ねたような顔をする。
 ガーネットはまたくすくす笑った。
 ジタンは寝返りを打ってぷいっと向こう側を向き、不貞腐れてしまった。
「ねぇ、怒ったの?」
 ガーネットは顔を覗き込もうと身を乗り出す。
「ねぇったら、ジタ……」
「隙あり!」
「きゃあっ!」
 ぎゅっと肩を掴まれてあっという間に形勢逆転。
 くるりとひっくり返されてベッドに押し倒されていた。
 動こうにも、上からがっちりと腕を掴まれてしまってどうしようもない。
「ちょっと、もう、ジタン!」
「大の男に『カワイイ』なんて言うダガーが悪いんだぜ?」
 悪戯っ子のような顔をして、ジタンが言う。
 ……どこが「大の男」?
 ガーネットは、思わず噴き出して笑い出す。
「だって、本当に可愛かったんだもの」
「まだ言うか!」
「だって……、え? ちょ、ちょっと、ジタンったら!」

 清らかな笑い声は、初夏の風に乗り、蒼い空へと吸い込まれていった―――。


-Fin-


げほげほっ。ヘタクソ(笑)
せいはラヴシーンが苦手です。得意技もないですが(^^;)
一般にはジタンが先に起きてるパターンが多いですが、敢えて逆。ジタンは寝坊そう。
ともあれ、ジタガネ好きなのにヘタクソなのはどういうことでしょう?(苦笑)
2002.9.6



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