温度
「熱っ!」
淹れたての紅茶を一口飲んで、ジタンは小さく悲鳴を上げた。
「あっちぃ〜! 舌ヤケドした〜」
「大丈夫?」
ガーネットは心配そうにジタンの顔を覗き込み、自分のカップにもお茶を注いでから、軽くなったポットをテーブルに置いた。
ポットの注ぎ口からは、今もモクモクと白い煙が立ち昇っている。
「一気に飲もうとするからいけないのよ、ジタン。少し冷ました方がいいわ」
と、ガーネット。
ジタンは何となくむっとした。
「どうせなら、初めから温いお茶入れてくれよ」
「あら、ダメよ。紅茶は熱いお湯で淹れなきゃ、香りが立たないのよ」
「だって面倒だろ? 冷めるまで待ってなきゃならないなんてさ」
「少しずつ飲めば熱くないわ」
「い〜や、熱いね」
「熱くないわよ!」
お互い、一歩も譲らない。
そこで、エーコは提案した。
「だったら、ジタンのカップには氷を入れておけば?」
***
「へっくしゅん!」
風呂から上がるなり、ジタンがクシャミを連発した。
「ジタン、ちゃんと温まったの?」
と、ガーネット。
ジタンは唇を尖らせた。
「だってさぁ、風呂温いんだもん。かったるいから出てきちまったよ」
「もう、ジタンは熱いお湯に入りすぎるのよ。体に良くないわ」
「そう言ったって、あんな温いんじゃ、入った気がしないだろ?」
「そうかしら。ゆっくり浸かることができるし、リラックスできると思うけど」
「いや、断然風呂は熱い湯に限る!」
「そんなことないわ、温めのお湯でゆっくりしたいもの」
お互い、一歩も譲らない。
そこで、ビビは提案した。
「じゃぁさ、ジタンが先に熱いお風呂に入って、冷めたらおねえちゃんが入るっていうのは、どうかなぁ?」
***
「暑い!」
ジタンはがばっと布団をはいだ。
「ちょっとジタン、寒いじゃない」
「寒い!? どこが」
「まだ六月ですもの、朝晩は冷えるわよ」
「そうかなぁ……」
ジタンはくるりと寝返りを打ち、ガーネットを布団ごと抱きしめた。
「なんか、今日はよく喧嘩した気がするな」
「ふふ、そうね」
ガーネットはおかしそうに笑う。
その笑顔が嬉しくて、ジタンはますますガーネットを抱き寄せた。
「あ〜、布団ジャマだ!」
「寒いもの、嫌よ」
「ダガーが寒かったら、オレが暖めるからいいんだよ」
「……もう、ジタンったら」
ガーネットはクスクスと笑いながら、ジタンの頬に両手を伸ばした。
「ダメ?」
と悪戯っぽく訊くジタンに、ガーネットはこう答えた。
「いいえ。好きよ、あなたの温度」
-Fin-
お題第2弾、「温度」でした〜。
たまには二人にも喧嘩していただこうと思ったんですが、
喧嘩してもやっぱりラブラブでした(笑)
ビビも出ていますが、ED後で結婚後っぽいですね、雰囲気は。一緒に寝てるし(笑)
2003.10.26
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