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―――あれから、十二年。 いろいろあったと言えば、あったのだろう。ジタンがアジトを飛び出していった時もあった。 が。 希望通り、彼らはあれからずっと仲間を続けている。 たぶん、一人前になってタンタラスを出たあとも、この子たちなら永遠に仲間で在れるかも知れない……他の卒業生たちのように、希薄な付き合いなどにはならずに。 「な~にやってんだい、バクー親分」 扉の隙間から、ひょこっと頭が出る。 「おぅ、なんだ。マリアか」 「なんだとはひどいじゃないか、卒業生がたまに顔見せてやったってのにさ」 マリアは部屋に入り、腰に手を当てて、二段ベッドの上下でぐっすり寝こけている二人の少年を見遣った。 「あらま。二人とも変わらないねぇ、寝顔は」 と、クスクス笑い。 「何をじっと見てたんだい、親分。しょぼくれちゃって見っとも無いったら」 「……お前の口が悪ぃのも変わらねぇな」 「生まれつきなのさ」 マリアはそう言って、冷たい風を吸い込んでいた窓を閉じた。 「昔のことでも思い出してたのかい?」 「ま、そんなところだ」 「年寄りになったもんじゃないか」 「へっ、年寄り呼ばわりされるにゃまだ早いってんだよ。―――おめぇは、心配性なのも変わらねぇな、マリア」 「―――はい?」 マリアは振り向いた。 「明日のこと、どっから聞きやがった」 うっ、と詰まるマリア。 「どこだっていいだろう? それより―――大丈夫なんだろうね? そんな大それたことして……」 「大丈夫ってんだ。俺が保証する」 「親分に保証されてもねぇ」 マリアは笑った。 「ま、それなら。あたしがヤキモキしてもしょうがないこった。無事を祈ってるよ」 「ありがとよ」 マリアはもう一度少年たちの寝顔を眺め、微笑んでから部屋を出て行った。 明日は、アレクサンドリア公演。 ―――シド大公から、重要な仕事を任されている日、だ。